マグロの血合いは、赤身や大トロに比べて驚くほど安く手に入るのに、下処理さえきちんとすれば旨みの濃い立派なおかずになる部位です。結論を先に言うと、血合いの美味しさを引き出す鍵は「臭み抜き」と「新鮮なものを選ぶこと」の2点にあります。
血合いは鉄分が多く含まれる分、酸化や臭みが出やすい部位ですが、正しい手順で下処理をすれば、味噌煮や生姜焼きにした時に赤身以上のコクを楽しめます。
食品関連の営業として10年以上、毎日のように鮮魚と向き合ってきた私が、血合い特有の臭みの正体と、それを取り除く具体的な下処理の方法、鮮度の見分け方、そして実際に美味しく仕上がる料理法まで紹介します。
血合いが「安くて栄養豊富」と言われる理由
血合いは筋肉の中でも酸素を多く取り込む働きを持つ部分で、その分ミオグロビンという赤い色素タンパク質やヘモグロビンが豊富に含まれています。これが血合い特有の濃い赤色と、鉄分・ビタミンB群が豊富な栄養価の高さにつながっています。
栄養面では優秀な部位である一方、血液由来の成分が多いために酸化が早く進みやすく、時間が経つと生臭さの原因になるという弱点もあります。
市場では「足が早い部位」として扱われるため、加工技術のなかった時代は捨てられることも多かったのですが、下処理の知識が広まった今では、赤身よりもコスパの良い部位として見直されています。臭みの正体を理解しておけば、対策も立てやすくなります。
臭みを抜く下処理の手順
血合いの下処理でまず行うのは「血抜き」です。血合いを一口大に切り分けたら、塩水(水500mlに塩小さじ1程度)に10分ほど浸し、表面に浮いてくる血液や汚れを洗い流します。
その後、牛乳に15分ほど浸けておくと、牛乳のタンパク質が臭みの成分を吸着してくれるので、生臭さがかなり和らぎます。牛乳がない場合は、酒と生姜のすりおろしを揉み込んでおくだけでも効果があります。最後に軽く水気を拭き取ってから調理に入りましょう。
この下処理を省略すると、どんなに良い調味料を使っても生臭さが残ってしまうので、時間がなくても最低限「塩水に浸ける」工程だけは飛ばさないようにしてください。

血合いの選び方|新鮮なものを見分けるポイント
血合いは鮮度が味を大きく左右する部位です。私が鮮魚を仕入れる現場で必ず確認しているのは「色」「弾力」「におい」の3点で、これは家庭で買うときも同じ基準が使えます。
まず色は、鮮やかな赤黒い色をしているものを選びます。表面が茶色っぽく変色していたり、白っぽく濁っている場合は酸化が進んでいるサインです。指で軽く押してみて、すぐに弾力が戻るものが新鮮な証拠になります。
においは、鉄っぽい血の香りまでは正常ですが、ツンとした酸っぱさやアンモニア臭がある場合は購入を避けてください。パック詰めの場合は、ドリップ(赤い液体)が大量に出ていないかも確認すると安心です。
私自身、以前ドリップの多いパックをそのまま買ってしまい、下処理をしても臭みが取り切れなかった失敗があります。それ以来、購入前の見た目チェックを必ず習慣にしています。
血合いを美味しく食べる料理法2選
下処理を終えたら、まず試してほしいのが「血合いの味噌煮」です。鍋に味噌・みりん・酒・砂糖・水を合わせた煮汁を煮立て、血合いと生姜の千切りを加えて中火で15分ほど煮込みます。味噌のコクが血合いの旨みと合わさり、ご飯が進む一品になります。
もう一つは「血合いの生姜焼き」です。下処理済みの血合いに酒・醤油・すりおろし生姜を揉み込んで10分置き、フライパンでカリッと焼き上げるだけのシンプルな調理法ですが、外は香ばしく中はしっとりとした食感に仕上がり、お弁当のおかずにもぴったりです。
どちらも下処理さえ済んでいれば15分程度で完成する手軽さが魅力です。
ワンポイントアドバイス
血合いを扱う際のワンポイントアドバイスは「加熱は短時間でしっかりめに」です。血合いは加熱しすぎるとパサつきやすい一方、生焼けだと臭みが残るという扱いにくさがあります。
味噌煮なら落とし蓋をして中まで火を通す、生姜焼きなら強めの中火で手早く焼き上げるなど、レシピごとの火加減を守ることが美味しさの決め手です。また、購入時は変色が少なく、みずみずしい色合いのものを選ぶと下処理の手間も少なく済みます。

血合いにまつわる豆知識
血合いは英語圏では「dark meat」と呼ばれ、実は世界中の回遊魚に共通して見られる部位です。マグロやカツオのように長距離を泳ぎ続ける魚ほど血合いの割合が多くなる傾向があり、これは酸素を効率よく取り込むための進化の結果だと言われています。
日本では古くから血合いを味噌煮や佃煮にして活用してきた歴史があり、漁師町では捨てるところのない食材として大切にされてきました。近年は栄養価の高さが見直され、鉄分補給を意識する方や、貧血気味の方にもおすすめできる部位として注目されています。
安価で栄養価も高いという点で、家計にも体にも優しい食材と言えるでしょう。
料理のレパートリーを広げるコツ
血合いは下処理さえ済ませておけば、和風の煮物だけでなく、カレーや麻婆豆腐のような香辛料の強い料理にも活用できます。特にカレーは、血合いの濃厚な旨みがルーに溶け込み、いつもと違う深いコクを楽しめるためおすすめです。
下処理をした血合いを一口大に切って冷凍しておけば、忙しい日でも凍ったまま煮込み料理に加えるだけで使えるので、常備しておくと調理の幅がぐっと広がります。
よくある質問
血合いはスーパーでも手に入りますか?
解体済みのパック商品として置かれていることは少なく、鮮魚コーナーで注文するか、通販の加熱用マグロセットに含まれていることが多いです。
下処理をしても臭みが取れない場合は?
牛乳や塩水に浸ける時間を長めに取る、または生姜・にんにくなど香りの強い調味料をしっかり効かせることで対策できます。それでも気になる場合は、カレーなど香辛料の強い料理に活用するのもおすすめです。
冷凍保存はできますか?
下処理を済ませた状態でラップに包み、冷凍用保存袋に入れれば2〜3週間程度保存可能です。解凍は冷蔵庫でゆっくり行ってください。
子どものお弁当にも使えますか?
生姜焼きにしてしっかり味付けをすれば、冷めても美味しく食べられるためお弁当のおかずにも向いています。臭みが気になる場合は、下処理の際に牛乳に浸ける時間を長めに取ると安心です。
マグロの目玉や他の希少部位とも組み合わせられますか?
血合いと同じく下処理が鍵になる部位として、マグロの目玉があります。目玉は下茹でしてから煮付けや潮汁にすると美味しく、血合いと合わせて「もったいない部位」をまとめて楽しむ献立を組むのもおすすめです。詳しい下処理は関連記事で紹介しています。
まとめ
マグロの血合いは、赤身や大トロに比べて驚くほど安く手に入るのに、下処理さえきちんとすれば旨みの濃い立派なおかずになる部位です。
血合いならではの臭み抜きと選び方、火の通し方さえ押さえておけば、これまで捨てていた部位も、家庭で無理なく美味しいおかずに変えられます。まずは今回紹介した生姜焼きから試して、血合いの旨みの濃さを実感してみてください。
慣れてくれば、下味のアレンジにも挑戦しやすくなるはずです。
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